整動鍼®(古武術鍼法)/理論

活法に基づく

理論と実践術のベースは活法に由来する。「動作」に主眼を置いた調整術という部分は共通し、ツボで動作をコントロールするという発想が加わっている。もっとも整体に近い鍼灸術と言っても間違いではないだろう。動作をコントロールすることで痛みに対応できる他、パフォーマンスの向上や内臓のトラブルにも応用ができる。

伝達系と連動系

伝達系と連動系という2つの表現を用いて、整動鍼の特徴を説明してみたい。従来の鍼灸の考え方は、流派が違えど原則的に伝達系を基本にしたモデルだと思われる。伝達系とは、ツボに入った刺激(信号)が、経絡などのルートを通じて伝わって目的部位(局所)に届くイメージである。これに対して、連動系とはツボで刺激した部位が反応を示した際、同時刻に対称部位に変化が起こるイメージである。

整動鍼の特徴解説_伝達系と連動系

連動系は、この図に示すようにシーソーで考えるとわかりやすい。片方の重さが変化すると、その瞬間にもう片方が上がったり下がったりする。重さの変化が片側に伝わるまでに時間はかからない。タイムラグのない反応である。臨床における連動系のメリットは、動きの回復に有利なことに加え即効性があることにある。

整動鍼では、硬結や動きに渋さのあるところは“重い”と解釈する。重量が余計にあるイメージである。シーソーであれば重さに応じて傾くが、人体には恒常性があるため水平に保とうとする。対する側の重量が重くなって傾かないように調整されているのである。

もちろん、これはイメージであって実際に重さが変わることはない。しかし、身体感覚として考えるならば、この“重さ”の存在を理解することは難しくないであろう。

整動鍼が提案する連動系

 

整動鍼には経絡を用いる発想がない。とはいえ、従来の鍼灸と重なるところもあり、結果的には経絡を用いているとも言える。この技術は、従来の鍼灸が触れてこなかった「動き」にフォーカスし、理論と実践を発展させたものであり、従来の鍼灸を共存が可能なものである。

整動鍼では、動きを整えるために、筋肉が主なターゲットになる。動きを妨げる筋肉の過緊張を緩和させることを目的とする。過緊張した筋肉は、触診ではコリとして感じられる。このコリは、収縮したままの筋肉であるからパワーを発揮しない。肉体的な感覚としてコリは重さと感じ、この重さによって動きが妨げられると痛みを感じる。

仮重(かじゅう)

実際の重量に変化はなくても、筋肉の過緊張(コリ)が重みに感じることから、これを「仮重」と定義する。仮重が生じると、動きの中心を越えた反対側にもう一つの重みが生まれると考える。身体は、実際の重量ではない重さについてもバランスを保持しようとしているのである。

ある程度までの仮重であれば問題は発生しないが、過度になると骨格や筋肉に大きな負担をかけ、痛みの原因となる。古武術鍼法において痛みを取ることは、仮重を上手に取ることである。

重律(じゅうりつ)

仮重によって狂いが生じた骨格の動き(骨格連動系)を調整することであり、整動鍼独自の概念である。「仮重を取ることで動きのバランスを整える」ということである。

連動系と中心

連動系を解説する上で外せないのは「中心」である。シーソーで言えば軸となる部分である。この軸を意識することで初めて連動系を操ることができる。

人体の動きはいくつもの円運動が複合的に組み合わされて成り立っている。ある動作(所作)に不具合が出ている時、その動作が必要とする円運動のうち少なくとも一つ以上に異常が発生している。円運動に異常は、言い換えると中心の狂いである。整動鍼は「動作の中心を整える」方法の一つと言える。

活法(古武術鍼法)における連動系と中心のイメージ図

静的バランスと動的バランス

静的バランスとは、静止状態で「まっすぐ」に見えるかどうかの基準である。この状態は、動作時にもよいバランスで動けるかというと、必ずしもそうではない。逆に、静止状態で曲がっているように見えても、スムーズに動けて何も不自由がなければ健全であると考える。

動的バランスとは、一言で言えば「動きやすさ」のことである。動的バランスがよいと動きながら重心を安定させることができる。

静的バランスと動的バランスが一致するのが理想であるが、この理想を追い求めることはしない。整動鍼では、常に動的バランスを優先する。その結果、静的バランス(見た目)も整うことが多いが、そうでない場合があっても調整することはしない(調整すると動的バランスが崩れるため)。

 

整動鍼理論_性的バランスと動的バランス

2つの均衡モデル

等重均衡

等重(とうじゅう)均衡はシーソーをイメージするとわかりやすい。中心からの距離が同じ点が釣り合う関係である。このモデルで大事なところは、動作中の中心は定位置になり動かないことである。

整動鍼理論_等重均衡

等差均衡

等差(とうさ)均衡は伸縮ハシゴをイメージするとわかりやすい。バランスを取り合う関係を重ね合わせた時、その序列は変わらない。A−A'間、B−B'間、C−C'間の距離が一定となり、中心は定位置にない。時にA−A'間、時にB−B'間といった具合に動作中は常に移動する。

整動鍼理論_等差均衡

痛みの原因と発現

どこかの筋肉の一部に負荷がかかったとする。すると、その筋肉はその負荷に耐えようとして縮む。この状態を仮重である。すると、その筋肉が関わる動作の中心が、その仮重に引き寄せられていく。中心が本来の位置からズレるので、カラダはそのズレに応じてつじつまを合わせようとする。その結果、仮重の位置から中心を飛び越えた位置に補正としての縮みが発生してしまう。この縮みが痛みを発生させているのである。

負荷がかかって仮重が生じている位置を原因点、バランスを補正しようとして縮んで痛みを発生させている位置を発現点と呼ぶ

治療点

原因点が治療点となる。原因点の仮重が解消されると、中心はすぐさま本来の位置に戻り、それと同時に発現点の縮みが解消される。その結果、痛みが緩解する。もちろん、仮重は一度に解消されるとは限らない。程度によっては時間と回数を要する。

発現点を治療点にした時と決定的に異なるのは、中心が補正されることである。中心が補正されると動きが円滑になり、骨や筋肉にかかる負担が軽減する。

選穴

整動鍼では経絡に基づく選穴を行わない。経絡とは全く異なる視点(動作の中心を整える)からツボを選ぶ。等重均衡、等差均衡の理論に基づき選穴を行うわけであるが、治療点の位置は理論のみから正確に導けるものではない。治療点の目安をつけた後、正確な位置について検証を重ねて定めている。その集積を積み重ねることで、各症状に対して適切な一点を選ぶことが可能となった。

従来のツボの位置に収まりきらないため、必要に応じて奇穴を設定している。一例として、腰椎の動きと腓骨の動きが連動しているため、腰椎のトラブルに対しては腓骨の動きを調整する。その際、基点となる腓骨頭の周辺には十分なツボがないため、独自のツボをいくつか設けている。各部の連動の詳細はセミナーのカリキュラムに組み込んだ。

脊柱編 脊柱の動きをコントロールするツボ(主に四肢のツボ)
→しなやかな体幹部の動きを実現する
四肢編 四肢の動きをコントロールするツボ(主に体幹部のツボ)
→伸縮自在な四肢の動きを実現する
腹背編 腹部と背部の動きをコントロールするツボ(全身のツボ)
→筋肉と内臓の関係から姿勢を調整する

 

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